和気清麻呂
濁流に打ち込まれた「一本の杭」。破滅を覚悟で真実を貫いた男
八世紀後半の平城京。
女帝・称徳天皇の深い寵愛を受けた僧・道鏡が、太政大臣禅師から法王へと登り詰め、ついには皇位すらも狙おうとしていました。
「道鏡を皇位に就かせれば天下は太平になる」。宇佐八幡宮から突如としてもたらされた最初の神託は、朝廷を支配する絶対権力者の願望をそのまま映し出したものでした。群臣たちが恐怖に口をつぐみ、誰もが時代の濁流に流されようとしていたその時。天皇から真の神意を確かめる勅使として派遣された一人の官僚が、流れに真っ向から逆らう報告を持ち帰ります。
和気清麻呂が持ち帰った神託。「我が国は開闢以来、君臣の分が定まっている。無道の人は早く掃いのけるべし」。それは、絶対権力者に媚びへつらえば栄達が約束された時代に、彼だけが破滅を覚悟で真実を突きつけた瞬間でした。名前を「別部穢麻呂(わけべのきたなまろ)」と貶められ、足の腱を切られて流罪となる過酷な代償。すべてを失うと分かっていながら、なぜ彼はその言葉を飲み込むことができなかったのでしょうか。
— noteの記事の導入部分より