鑑真
その盲いた瞳が捉えていた、千年の「正統」
あなたは、何のためなら目が見えなくなってもいいと思えますか?
おそらく、ほとんどの人は「そんなもの、ない」と答えるでしょう。 今、目を閉じて、このまま二度と開かないと想像してみてください。家族の顔も、道端の花も、もう二度と。怖くなって、すぐに目を開けたくなりませんか。
明日の予定を立てることさえ億劫に感じることがあるのに、10年先の、しかも見ず知らずの異国の誰かとの約束のために、自分の視力を差し出すなんて、想像も及ばないことです。 しかし、753年。日本の土を踏んだ一人の僧は、その問いに「はい」と答え、すべてを投げ打った人でした。
鑑真。
その名を持つ彼の両目から、光はすでに失われていました。5度の渡航失敗。10年以上の歳月。視力。そして、荒波に消えていった多くの弟子たちの命。それでもなお、彼は6度目の船に乗りました。
当時の日本は、仏教こそ伝わっていましたが、僧侶になるための厳格なルールが整っておらず、いわば「形だけ」の状態。そんな未熟な地へ、正しい秩序という名の背骨を通すために。
彼を突き動かしたものは、単なる義務感ではありません。それは、絶望の闇をも突き抜けていく、あまりに純粋で強靭な才能の輝きでした。
— noteの記事の導入部分より