ティベリウス・グラックス
共和政を揺るがした、正義という名の烈火
紀元前133年、地中海の覇権を握りつつあったローマ。 その黄金期を彩る繁栄の裏側で、長引く戦役に駆り出された市民兵たちは没落し、彼らが失った広大な土地は一握りの富裕層によって冷酷に飲み込まれていました。
国の背骨ともいえる農民層が消滅していくという、静かで確実な崩壊。 多くの元老院議員が己の既得権益というぬるま湯に浸かり、その危機から目を背けるなか、ただ一人、社会の深部に走る亀裂を直視し、命を懸けて国家の修復に身を投じた若き護民官がいました。 ティベリウス・センプローニウス・グラックス。
彼は、貴族の特権を焼き払おうとした危険な扇動家だったのでしょうか。 それとも、失われゆくローマの美徳を命がけで守ろうとした、真の愛国者だったのでしょうか。 血塗られた集会場で彼が最期に見上げた空の向こう側に、一人の人間が抱えた譲れないものの正体を探ります。
— noteの記事の導入部分より