ピュロス
勝利の代償を計算しながらも、破滅へと直進した戦術の天才
紀元前3世紀、アスクルムの起伏に富んだ大地。
ローマ軍との激戦の末、大地は両軍の兵士たちの血と骸で埋め尽くされていました。戦象を駆使して強大なローマ軍を打ち破り、歓喜に沸き返る陣営。しかし、エピロス王ピュロスは、その狂騒の中でただ一人、冷え切った眼差しで自軍の夥しい犠牲者の数を数え上げていました。
側近が勝利の祝辞を述べた時、彼は静かに言い放ちます。
「もう一度ローマ軍に勝てば、我々は完全に滅亡するだろう」。
自らの破滅を誰よりも正確に予見していながら、彼はその後も軍を率いてシチリアへ、そしてギリシア本土へと果てしない戦いの旅を続けました。大国のような無尽蔵の資源を持たず、限界を知り尽くしていたはずの彼が、なぜ止まることなく破滅の淵へと進み続けなければならなかったのでしょうか。
— noteの記事の導入部分より