サッフォー
十番目のミューズが爪弾く、愛と魂の調べ
古代ギリシアの青き海に浮かぶレスボス島。
神々の威光や英雄たちの血生臭い戦いを壮大に歌い上げる叙事詩が世の喝采を浴びていた時代に、ひそやかでありながら、決して消えることのない感情の揺れに光を当てたひとりの女性がいました。
サッフォー。のちに哲学者プラトンをして「十番目のミューズ(芸術の女神)」と言わしめた彼女の詩は、神々という巨大な主語ではなく、「私」という極小の個人の内なる痛切な愛を歌い上げました。
数千年の歴史の波に洗われ、今日に残された彼女の言葉の多くは、破れかけたパピルスの断片に過ぎません。しかし、その欠け落ちた文字の隙間からでさえ、愛する者を前にして声が詰まる切実な息遣いが、鮮明な響きとして現代に届いてきます。巨大なうねりの中で、ただ一つの魂との結びつきを見つめ続けた彼女の精神は、どのような形をしていたのでしょうか。
数千年の時を超えて響く彼女の魂の輪郭を紐解いていきましょう。
— noteの記事の導入部分より