中国・戦国
孟嘗君
見捨てられた忌み子が巻き起こした、混沌を飲み込む渦
戦国時代の中国、斉の国。
数千人の食客を養い、歴史にその名を轟かせた一人の宰相がいました。
孟嘗君、名を田文。
彼のもとには、諸国から逃亡してきた者、罪を犯した者、あるいは身分の低い者までもが集い、凄まじい熱気を放っていました。血筋が全てを決める時代に、彼だけが社会の底辺を這う者たちを無差別に拾い上げ、巨大な渦の中心に座していたのです。
なぜ彼は、これほどまでに混沌とした集団の主となったのでしょうか。
五月五日の「忌み子」として、実の父に存在を否定された幼き日の絶望。二度と「不要な存在」として見捨てられまいと無数の他者を抱え込んだその手は、本当は「ただ在るだけでいい」と誰かに抱きしめられる確かな体温を、何よりも渇望していたのかもしれません。
— noteの記事の導入部分より