藤原冬嗣
優しさで選択肢を奪う「摩擦なき独裁」
平安時代初期の平安京。
権力闘争が常であったこの時代に、ひたすらに自らの輪郭を消し続けた男がいます。天皇の秘書官長(蔵人頭)として国政の実務を回し、のちの藤原北家繁栄の強固な礎を築いた官僚、藤原冬嗣。
最高権力者に登り詰めながらも、彼は決して自らを誇示することはありませんでした。人並外れた才覚を持ちながらも温和でへりくだった態度を崩さず、誰の敵にもなりませんでした。
大同5年(810年)、薬子の変と呼ばれる国家の危機においてすら、彼はただ黙々と機密文書の処理と伝達を捌き続けました。
激動の朝廷において、なぜ彼だけがそこまで徹底して無害を装い、頂点へと至ることができたのでしょうか。彼の中で、音を立てずに編み上げられていたものは何だったのでしょうか。
— noteの記事の導入部分より