藤原不比等
二度と奪われないための冷たい城
壬申の乱。血の論理がすべてを決める7世紀後半の飛鳥において、敗者の血筋となった一族の転落を、14歳の少年はただ黙って見つめていました。
父・鎌足が天皇の盟友として築き上げた権力は、気まぐれな風向き一つで一夜にして消え去ります。その光景は、少年の心に決して癒えることのない恐怖を刻み込んだのでしょう。
後に日本の法治国家の骨組みを作り、藤原氏繁栄の礎を築いた右大臣、藤原不比等。 絶対的な権力を持つ天皇の背後で、彼は決して表舞台の頂点には立とうとしませんでした。ただひたすらに、情や気まぐれに左右されない冷徹な制度という名の見えない城壁を築き、法と血脈の網の目で国家を絡め取っていったのです。
一族の生存権が理不尽に奪われる恐怖を二度と味わわないために、彼の中で何が凍りつき、何が狂おしいほどに動き始めたのでしょうか。
— noteの記事の導入部分より