趙奢
規律の水平、例外なき統制の果てに

紀元前三世紀、中国の戦国時代。
大国がしのぎを削る激動の趙の国に、一人の地方官がいました。のちに百戦錬磨の老将たちが諦めた峻険な進軍路を突き進み、強大な秦の軍勢を打ち破ることになる男。彼の名は趙奢。
権力者を前にしても、生死が交錯する戦場であっても、彼はただ一貫した規律だけを絶対の物差しとして、淡々と動き続けました。
その異質さが鮮烈に現れたのは、有力な王族である平原君の邸宅から税を徴収しようとしたときのことです。権勢を笠に着た家令たちが支払いを拒み、執務を妨害した際、彼は法に基づき、関わった家令ら九人の処刑を命じました。激怒した平原君に捕らえられ、剣を突きつけられた状況にあっても、彼は一歩も引きませんでした。国家の法という骨組みが崩壊すれば、貴族の富も維持できなくなるという因果を、理路整然と説いてみせたのです。
死線を前にしても揺らぐことのない論理。彼を突き動かしていた内なる衝動は、どのようなものだったのでしょうか。
— noteの記事の導入部分より