申不害
情を切り捨て「術」に殉じた男。極限の合理が招いた冷たき静寂
中国・戦国時代。
四方を大国に囲まれ、いつ蹂躙されてもおかしくない弱小国・韓。この絶望的な地政学のただ中で、十五年にわたり国家を外敵から守り抜き、強国へと押し上げた宰相がいました。申不害(しんふがい)。
彼が武器としたのは、軍事力でも熱い精神論でもありません。人間の情や曖昧さを一切許さない、冷徹な「術(臣下を統制する監視と操縦の仕組み)」でした。
彼が従兄の官職を主君に求めた際、主君から「あなたが私に説いた掟に背くことになるがよいか」と切り返されるや否や、即座に私情を捨てて平伏しました。己が造り上げ、主君に授けた冷酷なルールの刃が自らの首筋に向けられたとき、その言葉の前に平伏し、容赦なく己の情を切り捨ててみせたのです。一人の人間としての温もりを捨て去ってでも、彼が守り抜きたかったものとは何だったのでしょうか。
— noteの記事の導入部分より