ルキウス・コルネリウス・スッラ
血塗られた名簿の先に見た「秩序」の肖像
「これほど友に報い、これほど敵に報復した者はいない」。
墓碑銘に刻まれたこの言葉は、スッラという男の苛烈な生き様を鮮烈に物語っています。
かつての栄光が嘘のように、ローマの街は荒れ果てていました。広場には怒号が飛び交い、昨日までの隣人が今日は敵として刃を交える。紀元前一世紀、共和政という名の巨大な石造建築は、内側からボロボロに崩れ落ちようとしていたのです。その瓦礫の中に、一人の男が立っていました。
ルキウス・コルネリウス・スッラ。彼の顔は、赤く斑点のある大理石に例えられたといいます。冷徹な青い瞳の奥には、彼にしか見えていない「あるべきローマの姿」がありました。彼は、己を「幸運な者(フェリックス)」と呼びました。しかし、それは決して棚からぼた餅のような幸運を指す言葉ではありません。混沌の中に、内なる意志で一本の筋を通し続ける者にのみ、神々は微笑む。彼は、そう信じ切っていたのです。
— noteの記事の導入部分より