太公望(呂尚)
時流を読み、天下を釣り上げた大賢
商末期から周初期にかけての中原。
暴君の苛烈な支配が人々を苦しめるなか、長く不遇の時を過ごしたのち、やがて周の文王に見出され、その子・武王を補佐して強大な商王朝を打ち滅ぼし、新国家の建国に決定的な貢献を果たした軍師がいました。
彼の名は呂尚。
のちに「太公望」として語り継がれるこの人物には、奇妙な伝承が残されています。渭水の畔に腰を下ろし、真っ直ぐな針を川面に垂らして、ただじっと水底を見つめ続けていたといいます。目の前を泳ぐ小魚には目もくれず、天下という巨大な獲物を待ち構えるその姿は、通りがかる者たちの目には理解不能な狂人として映ったことでしょう。
暴政が吹き荒れる時代にあって、ただ独り大きなうねりを待ち続けたその特異な振る舞い。深淵を見つめる彼の瞳の奥底には、一体どのような景色が映っていたのでしょうか。
— noteの記事の導入部分より