ヨーロッパ中近世
サンドロ・ボッティチェリ
過去の己を焼き尽くす、信念という名の狂気
ルネサンス絶頂期のイタリア、フィレンツェ。メディチ家に厚く庇護され、数々の優美な神話画を残し、やがて激しい宗教運動の渦に飲み込まれていった一人の画家がいます。サンドロ・ボッティチェリ。
次々と生まれる新しい技法に周囲が熱狂し、時代が猛烈な勢いで前進していく中、彼一人だけが狂気に近い確信を胸に、「過去の様式」へと逆走していきました。より写実的で立体的な絵画表現へと向かっていく時代に、彼だけが平面的で流麗な「線」を引き続けました。やがて彼は、ルネサンスが積み上げてきた進歩を自らの手で手放し、中世の祈りの世界へと歩みを引き返すという、重い決断をしたのです。
彼はいったい、何を見ていたのでしょうか。時代の頂点に立ちながら、なぜ自らの意思で歩みを引き返すような選択をしたのでしょうか。
— noteの記事の導入部分より