ペイシストラトス
拍手喝采のなか、自由は静かに奪われる。不可視の檻を編み上げた演出家
紀元前6世紀の古代アテナイ。
誇り高き貴族たちが終わりのない派閥争いに明け暮れ、都市という生き物が内側から腐り落ちようとしていた時代。血で血を洗う不毛な権力闘争に、誰かが強引にでも終止符を打たなければならなかった。その切迫した絶望の淵から、大衆の感情を操るという危うい手段を手に、権力の座へと駆け上がった男がいます。ペイシストラトス。
彼が権力への階段を上り始めた日、アテナイの広場は異様な空気に包まれました。血まみれの姿で彼が現れたのです。政敵に襲われたと訴えるその傷は、自身と乗っていたロバに自ら刃を突き立てて刻んだものでした。神話が支配する世界で、彼は現実の流血という生々しい演出を用い、民衆の同情と怒りを惹きつけました。
なぜ、彼は自らの肉体を切り刻んでまで、大衆の熱狂をかき立てる必要があったのか。その血塗られた舞台裏で、彼はいったい何を見据えていたのでしょうか。
— noteの記事の導入部分より