フェイディアス
神々を現世に降ろした「黄金の鑿(のみ)」
アテナイのアクロポリスにそびえ立つパルテノン神殿。
その裏には、美の極致を求めた一人の男の執念がありました。彫刻家であり、建設の総監督でもあったフェイディアスです。
彼は、オリンピアのゼウス像やアテナ・パルテノス像など、後世の人々が「神の姿そのもの」と信じた傑作を世に送り出しました。周囲から「誰にも見えない部分になぜそこまで手を尽くすのか」と問われ、「神々が見ている」と答えたという伝説は有名です。
この言葉は後世の人々が彼に仮託した創作とされていますが、パルテノンの彫刻群は、人の目が届かない背面までもが完璧に仕上げられています。思わず伝説を創りたくなるほど、彼の完璧主義は常軌を逸していました。
盟友ペリクレスと共にアテナイの栄華を形作った彼の才能は、同時に政治的な危うさを孕んでいました。やがて彼自身が神像の黄金を横領したと告発されますが、国家の準備金としてあらかじめ黄金パーツを着脱・計量可能な構造にしていたことが功を奏し、一度は無実を証明します。
しかし、政敵の追及はそこで終わりませんでした。あろうことか、完成した女神アテナの盾のレリーフに、自分と盟友の姿を彫り込んでいた事実が掘り起こされます。これが「不敬罪」という、反ペリクレス派にとって決定的な攻撃材料となったのです。
素材と対話し続けたこの男は、いかなる才能を振るっていたのでしょうか。
— noteの記事の導入部分より