吉田松陰
魂の種火に薪をくべる、未完の才能の「目撃者」
江戸時代末期、長州藩の萩。
のちに明治維新を担う若者たちを育て上げた兵学師範がいました。
吉田松陰です。
身分や家格が個人の価値を絶対的に決める封建の世にあって、実績も名もない若者たちを「友」として迎え入れ、彼らの未熟さを物語の序章として無条件に祝福したのです。
城下外れにある八畳ほどの狭い私塾。
彼は、膝が触れ合うほどの距離で、まだ何者でもない若者たちの眼の奥に宿る熱を、身を乗り出すようにして見つめています。彼が恐れたのは、幕府の弾圧でも時代の停滞でもありません。目の前にいる不器用な若者たちの中に潜む、まだ言葉にならない志の萌芽を見逃してしまうことでした。その小さな種火に己の命を削ってでも薪をくべ、ただひたすらに彼らの可能性を引き上げようとするその凄み。
教え導くのではなく、彼らが自らの手で未来の扉をこじ開ける瞬間を、理屈を超えて待ちわびていたのです。
— noteの記事の導入部分より