トマス・モア
魂の法廷で絶対の天秤を保ち続けた、不動の大法官
法の最高責任者たる大法官として、イングランドの正義を背負ったトマス・モア。彼を裁いたのは世俗の法廷でしたが、彼もまた、死の直前まで内なる法廷で時代を裁き続けていました。ただ一度、ペンをとって国王を教会の長と認める誓約書に署名さえすれば、再び家族と抱き合い、温かい暖炉のそばで書物をめくる日々に戻れたはずです。しかし彼は、冷たい石造りの牢獄で静かに首を横に振り、断頭台へと向かう道を歩み通します。
『ユートピア』を著し、理想の社会を立ち上げた法学者は、なぜ命を散らす判決を受け入れたのか。彼の内奥で熱を帯びていたのは、決して狂うことのない正義の天秤でした。
— noteの記事の導入部分より