陰麗華
乱世の太陽を支えた「静かなる月」の慈愛
「仕官するなら執金吾、妻を娶らば陰麗華」
かつて一介の書生に過ぎなかった劉秀――後の光武帝は、そう嘆息しました。長安の街で見かけたきらびやかな近衛兵に憧れ、そして故郷でその名を知られた美貌と徳の誉れ高い女性、陰麗華を想っての言葉です。この願いは後に、中国史上稀に見る「純愛」の成就として結実することになります。
しかし、その物語は決して平坦なものではありませんでした。
動乱の渦中、劉秀は天下を平定するために政略結婚を強いられます。最愛の彼女を故郷に残したまま、別の女性を皇后に据えることになったのです。戦火、離別、そして後宮という名の静かな戦場。その中で彼女が選んだ生き方は、激しく輝く太陽を、静かに、しかしどこまでも深く照らし続ける月であり続けることでした。
— noteの記事の導入部分より