春申君
計算し尽くした盤面が、たった一つの情で崩れるとき

戦国末期、超大国・秦の軍靴が迫り、楚国が蹂躙されゆく無力な時代。
王族の血を引かぬ身でありながら宰相に上り詰め、国を背負った男がいました。春申君(黄歇)。
彼の手法は、あまりにも常軌を逸しています。趙からの使者が自国の富をひけらかした際、彼は食客たちに真珠で飾り立てた靴を履かせ、大広間を歩き回らせました。言葉を発することなく、桁外れの富と威容を見せつけ、他国を圧倒する。亡国の足音が迫る焦燥の時代に、彼だけが真珠の靴音で虚勢という名の城壁を築き上げたのです。
冷徹な知略で大国を渡り歩く盤面の支配者の胸の奥底で、いったい何が蠢いていたのでしょうか。
— noteの記事の導入部分より