チェーザレ・ボルジア
泥濘に秩序を打ち立てた冷徹なる建築家
15世紀末のイタリア半島は、小国が乱立し、大国の思惑が交錯する果てしない泥濘の荒野でした。その無秩序な世界に、流星のごとく現れ、そして散っていった男がいます。教皇アレクサンデル6世の庶子であり、ニッコロ・マキャヴェッリに『君主論』を執筆させた理想の君主、チェーザレ・ボルジアです。
彼は冷酷非情な野心家として歴史に名を刻んでいますが、ロマーニャ地方を平定した際に見せたのは、単なる破壊ではありませんでした。略奪を固く禁じ、私情を挟まない公正な裁判所を設置し、混沌とした荒野に確固たる構造を築き上げたのです。教皇という「父の権力」がいつ崩れ去るかわからない砂上の楼閣であることを誰よりも理解し、彼は冷たい石を一つずつ積み上げるように、徹底した現実主義で不確実性(フォルトゥナ)を支配しようと足掻き続けました。
— noteの記事の導入部分より