竹中半兵衛(重治)
その「智」は、ただ濁りなき誠のために。
戦国という時代は、奪い合う火が全てを焼き尽くす荒野でした。力がある者が勝ち、持たざる者が踏みにじられる時代でした。その騒乱の真っ只中にあって、一人、冷たく静かな風のように生きた男がいました。
竹中半兵衛重治。
武士というよりは公家のような、驚くほど細く白い指。主君の斎藤龍興からはその頼りない風貌を軽んじられ、龍興の寵臣からは顔に尿をかけられるという屈辱まで受けたと伝わっています。しかし、その静かな瞳は、嘲笑を浴びながらも、時代がどこへ向かおうとしているのかを、ただ、じっと見つめていました。
彼が歴史にその名を刻んだのは、難攻不落の稲葉山城を、わずかな手勢で乗っ取った事件です。彼は権力が欲しくて城を奪ったのではありません。酒に溺れ、部下の言葉を無視し続ける主君の目を覚まさせるために、このあり得ない策を選びました。
城を奪った後、彼は半年も経たぬうちに、あっさりとそれを主君に返して山へ消えます。出世も富も、彼にとっては意味をなさないものでした。彼を突き動かしていたのは、誰かに勝つことではなく、自分の心が「正しい」と信じる場所へ向かうこと。ただ、それだけだったのです。
— noteの記事の導入部分より