韓非
混沌を「法」で制し、嫉妬に葬られた孤高の天才
戦国時代の末期、騒乱の極みにあった中国大陸で、言葉ではなく「理」に殉じた男がいました。その名は韓非。現実主義による統治理論の提唱者として、のちの歴史に決定的な足跡を残した思想家です。
王族の血を引きながらも、生まれつきの吃音(きつおん)ゆえに弁論の場では疎まれてきました。しかし、彼の筆から竹簡に紡がれる冷徹な文章は、のちの始皇帝をして「この者と語らうことができれば死んでも悔いはない」と言わしめるほどの凄みを帯びていました。
揺れ動く人の心や道徳などという不確かなものではなく、冷徹なまでに客観的な「法」の仕組みこそが、混迷を極める国を救う唯一の道である。彼が提唱した「法・術・勢」の三位一体の統治理論は、人間心理の深淵を読み切った末に到達した、究極のシステムでした。
— noteの記事の導入部分より